その「歯石とり」は。(おうちのひとに知っていてほしいこと)

最近、
「無麻酔の歯石取りをしていたけど、口が臭い」

という子を、多くみるようになってきました。
(これは、わんこの話題です)

口の中をチェックすると、
歯石はそれほど目だたない。

けれど、
歯科処置のときに、歯や顎のレントゲンを撮ってみると、
歯周病が進んでいて(重度の歯周病になっていて)、
顎の骨がとけていて、抜歯をせざるを得ない、というわんこが
最近増えてきているのです。

歯の周りの骨が溶けているので、
支えのなくなった歯がぐらぐらに……
(歯のレントゲン写真は、最後の方に載せています)

歯の根っこの近くで化膿が起こって、
膿がたまったり、
頬が腫れたりする子も少なくないです。

歯の、見えるところは割ときれいなんです。

しかし、これの「歯石取り」は……

はっきり言います。

歯の、見えるところだけをきれいにしても、
わんこの幸せには繋がりません。

見た目がきれいになって、一時的に匂いが減っても、
見えないところで歯周病が進行するのに気づきにくくなるだけです。

見た目はきれいなだけに、
歯周病が進行しているのに
おうちのひとに気づいてもらえない……

ということになっているようです。

歯のケアをしてあげたくて、
歯石取りをするのだと思うのです。

でもそれ、わんこのためにならないです。*
そこを、知って欲しい。
歯石取りのとき、歯周病があっても、
それはケアされない(できない)。

*歯周病が全くない子であれば、
歯石が取れたらさっぱりするかもしれません。
でも、歯周病の有無は、獣医師でないと判断できませんし、
治療もできません。

 動物病院でも、
 高齢だと麻酔をかけられないと言われることもあるようですが、
 実際には、検査で異常がなければ、
 高齢でも麻酔をかけて乗り越えていく子も
 少なくないということも知って欲しいです。

16才の歯科処置の記事(前編)はこちら

16才の歯科処置(後編)はこちら

どうしても麻酔をかけられない、
かけたなくない、という子の、
「歯石だけとる(歯周病は放っておく)」と
割り切った上であれば、アリなのかなぁとは思います。

でも、日常のケアとしては、いいところ、ないです。

ふだんから必要なのは、「はみがき」であって、
歯垢を歯石にしないこと。

どうしてこう、やや怒り気味の記事になったかというと、
歯のケアをきちんとしようと考えていたからこそ
おうちの子の歯石取りをしてもらっていたのに、
重度の歯周病になってしまっていて、
(実際、抜歯する前にとった、
 おうちの子の歯が揺れている動画や
 顎の骨が溶けているレントゲン写真を見て)
悲しい思いをするおうちの人を見てきたからです。

よかれと思ってしてきたのに、
よい結果にならないこともある。
それを知っているのと知らないのとでは、
あとあと大きく違ってきます。

ぜひ、知ってて欲しい。

* * * *

さて、実際、歯周病になるとどうなるのか。
見えないところのご案内。

見ていただきたいのが、歯のレントゲン写真です。

上と下を比べて、
違いがわかるでしょうか。
これは、わんこの下顎の大きな歯のあたりです。

上が、ほぼ正常。
歯の形にそって、黒い線が細く見えている状態。

下が、歯周病によって、顎の骨が吸収された(溶けた)状態。
歯の周りの黒く抜けているところ(赤矢印)が、
顎の骨がなくなってしまったところです。

この辺は、外からはあまり見えません。
ここで、歯周病が進行していくのです。

無麻酔の歯石取りをしている子たちは、
歯の汚れが少ないのに、
このような顎の骨になっていたりするのです。

↓かえってわかりにくいかもしれませんが……
 比較、しやすいでしょうか。

気づかない間に歯周病が進行していくことも多いこと、
進行するとどうなっていくのか、
見た目がきれいでも、ひどい歯周病になっていることもあること、

その辺をなんとなくでもイメージしてていただけるとなー
って思うのでした。