「おしっこが出ない」にもいろいろある
タイトルの通りなのですが、「おしっこが出ない(出にくい)」と言ってやってくる子たち、実際に起きている状況にはいくつかのバリエーションがあります。
ちなみに、おしっこのモトは、腎臓で作られます。
腎臓で作られた尿は、尿管を通って、膀胱に溜められます。
膀胱から、尿道を通って排泄されます。
ここまでは、いいでしょうか?
(イラストは人間の正面の図ですが、いぬねこも同じような感じです)
さて。
どの子もおしっこが出ないはずなのに、病院でチェックしてみると、
1.膀胱に尿が溜まっていない
2.膀胱に尿が溜まっている
の双方があります。
それぞれがどういうことなのかをみてみましょう。
1.尿が溜まっていない
膀胱炎などで、膀胱に尿が少しでもあると痛みがあったり、残尿感が強い場合によくあります。
おしっこを最後の1滴までしぼりだしても、まだ気持ち悪いと排尿ポーズをしていたり、ほんのちょっとでも排尿したりします。
元気食欲は問題ないことが多いです。
また、腎不全末期などでは、腎臓が尿を作ることができなくなり、膀胱に尿が溜まらなくなります。
この場合は全身状態が非常に悪く、ぐったりしています。
(死が間近の状態です)
* * *
膀胱炎は、いぬでもねこでも、結石や結晶が刺激して起きることがあります。
いぬでは細菌感染によるものがいちばん多く見られます。
ねこでは、上記の他、特発性といって、原因がはっきりしない血尿も見られます。
これらは、尿検査や膀胱の超音波検査などで診断していきます。
*
腎不全の末期は、非常に重症なので、「そういうこともある」という認識で大丈夫かと思います(突然なることはほとんどありません)
慢性腎不全からなっていくことが多いのですが、違う原因としては、中毒があります。
重度の腎不全を起こす中毒物質で、身近なものは、
いぬではぶどう(体質によっては、1粒でも亡くなることがあります)、
ねこでは百合(花そのものだけでなく、花粉や花瓶の水その他、関わる全てが中毒の元になります)
があります。
特に百合は全ねこにとって非常に危険ですので、様子見をせず、すぐに動物病院に行きましょう。
腎機能不全がはじまってきてから治療しても手遅れになります。
(腎機能不全を起こすものは、他にもたくさんあります)
2.尿が溜まっている
おしっこが物理的に出ていないことがあります。
その場合、膀胱がぱんぱんになってしまって、ねこでもテニスボールのように硬く触ることもあります(ねことしては非常につらいです。。)。
こうなってくると、とても具合が悪く、元気も食欲もなくなってきます。
そのままだと急性腎不全になってしまい、1〜2日の放置で亡くなることもあります。
急いで病院に駆け込むべき状態です。
尿路閉塞と言われますが、完全閉塞でない場合、尿がぽたぽた落ちていたりするので、1の場合と見分け辛いことがあります。
目安としては、
多くの子は膀胱炎では食欲不振や嘔吐は起きませんが、尿路閉塞の場合は元気がなくなり、食欲不振から嘔吐が起きてくることが多いです。
急性腎不全が発症している場合は、集中治療が必要にあるため、入院治療になることが多いです。
どちらも血尿が出ることがありますので、そこは目安にはなりません。
排尿がいつもと違う、おかしいな、という場合、特に元気食欲の低下が見られる場合は、たいへんな状態が隠れていることがあるので、なるべく早く動物病院を受診しましょう。