今日はそけいヘルニアの手術のおはなしです。

 

ナナちゃんはカニヘンダックス。
一般的なミニチュアダックスの子たちよりもちょっと小柄さんです。

当院を初めて受診したときは、10歳になっていました。

もっと若いころから鼠径（そけい）ヘルニアがあったそうで、その相談ということでした。

 

「そけい部」とは、うしろ足（ふともも）のつけね部分のことで、
「ヘルニア」は、体の組織が正しい位置から出てしまったことです。
（よく「腰のヘルニアが。。」と言ったりしますが、あれは「椎間板ヘルニア」になります）

なので、「そけいヘルニア」は、うしろ足のつけね部分で、お腹の中の組織が出てきてしまっている状態のことなのです。

 

軽度であれば、お腹の中にある脂肪が出てきて、「押したら引っ込む」こともあります。

重度になってくると、大きくなり、お腹の中の腸や膀胱などが出てきてしまうこともあります。

犬のそけいヘルニアは、女の子の場合は、発情とともに悪化するので、不妊手術をお勧めします。
（同時にヘルニアも治してしまいます）

また、ちっちゃい子犬のときに発見されたそけいヘルニアは、成長とともに徐々に小さくなることもあります。

でも、そうではない場合は、治療は外科手術になるため、やっぱり不妊・去勢手術とともに治してしまうこともあります。

おへそのヘルニア（臍ヘルニア）と同じですね。

 

ナナちゃんがもっと若いころ、おうちの方が、不妊手術やそけいヘルニアについて相談したとき、カニヘンダックスは体が小さいので手術できないという話もあったようでした。。。

そうこうするうちに、どんどん大きくなってしまったそうです。

 

確かに、ル・ル・ル動物病院を受診した時点での、ナナちゃんのヘルニアは、とても大きかったのです。
体に対してヘルニアが大きいのと、なにしろ小柄なダックスさんなので、歩くのにも邪魔になりそう。。。

 

ナナちゃんの実際の写真がこちら。
（写真は手術の前なので、毛を刈っています）

 

お腹が垂れているの、わかるでしょうか。

下半身を大きくしてみます。

赤い線が、ヘルニアがないときのお腹から後ろ足にかけてのライン。

青い線が、ヘルニアで膨らんでいる部分です。

体に対してとても大きいですが、放っておくと、もっと大きくなる可能性もありますし、根っこが締まって、ヘルニアの中の組織が壊死を起こす可能性もあります。

現時点でシニアになっているナナちゃん。早く手術するに越したことはありません。

 

術前検査のときに、お腹の中の腸のほとんどや、膀胱も、このヘルニアの中に入っていることがわかりました。

仰向けになっても、ヘルニアの中身は、一向にお腹に戻っていきません。

写真は仰向けのナナちゃん。（前足のピンクの包帯は、点滴のための管が入っているところです）

やっぱり足の付け根は近くは、大きく丸く膨らんでいます。

 

手術前の検査では、幸い大きな問題も見つからなかったので、早い方がいいですね、と、早々にヘルニアの中に入っている組織をお腹に戻す手術を行いました（不妊手術も同時に行いました）。

このとき、反対側の足の付け根にも、小さなそけいヘルニアがあったので（こちらはお腹のなかの脂肪だけが出ていました）、こちらも整復しました。

 

下に、その写真があります。小さくしてありますので、手術の写真が苦手なひとは薄目でチラ見してください。

ヘルニアの袋の中に、腸があるのがわかるでしょうか。。（小腸から大腸まで入っていました。このうしろに膀胱があります）

出たり引っ込んだりができなくなってからしばらく経っていたようで、ふくろの中を体液が満たしていました。

＊病気の手術の時は、写真を撮って、おうちの方に見ていただいています。

ここではそういう写真が苦手な方もたくさんいると思われますので、ごく一部を紹介しています。

 

大きなそけいヘルニアの整復と、ちっちゃいそけいヘルニアの整復、そして不妊手術。

ちっちゃい体で大きな手術になりましたが、ナナちゃんは元気に乗り越えてくれました。

 

ふだんは、ホテルなどのお泊まりではご飯を食べないというお話でしたが、入院中にはごはんもよく食べてくれました。

ナナちゃんは、見た目からは想像できない、意外とアクティブな性格なので、長年のヘルニアを縫い縮めたところが開いてしまったら。。。と心配していたのですが、幸いそんなこともなく、きれいに治っていきました。

写真では、ヘルニアのあったあたりの皮膚がだぶついていたり、長くヘルニアだったため、皮膚が慢性刺激で色素沈着を起こしているのが見えます。

傷を落ち着かせるために巻物をしていたせいか、傷の真ん中あたりが赤くなっちゃっています。。

 

その後、予定通り、手術から2週間後に抜糸をすませて、いまはすっかりスリムになったお腹で軽々と暮らしています。

これからまだまだ長いわんこ人生。楽しく元気に暮らせますように。

 

（そして案の定、元気になった時のナナちゃんの姿の写真を撮り忘れました。すっかり元気になったので、今度会えるのは次のワクチンかな。。）