口のなか、覗いてますか?(4)
ダックスのルカさん。
口が臭いと言われたと来院して、チェックしたらかなりの汚れ。
麻酔をしての歯科処置をすることになりました。
歯石を取ると歯が取れるという事態に。
しかも、その穴が鼻の穴に通じていて。。。
というのが、前回までのお話でした。
歯が、ぼこぼこっと取れて、大きな穴がひとつできました。
(他の歯もたくさん取れてしまいました)
穴にもいろいろあって、自力で塞がってくれるものもありますが、
この穴は鼻に通じているし、出血も激しかったので、縫合しました。
(穴が見えなくなったの、わかるでしょうか)
他の場所も、必要がある場所は縫合します。
事前の歯周病などの程度や、穴の場所(どの歯の穴か)によって、
縫合の方法が多少変わったり、周りの処置も異なったります。
いちばん大事なのは、当の本人(わんこ)が、起きた後の生活で困らないこと。
処置を乗り越えたことで、より快適な生活を手に入れられること。
そのような視点で処置・治療をしていきます。
残った歯は、まず、歯周ポケットの処置をします。
わんこの歯周ポケット、今回のように鼻腔(鼻の穴の奥)に届かなくても、
「意外と深いね」って子は、とても多いのです。
経験的には、小型犬種に多いように感じます。
そして、歯の表面を2度磨きして、つるっつるにします。
専用のブラシやラバーカップを使い、歯専用の研磨剤を使います。
もう、ほんとに、できる限りの「つるっつる」にします。
きれいになっているように見えない写真になっていて残念ですが。。
歯石とりをしただけの歯の表面には、目に見えないでこぼこがたくさんあるので、
かえって歯垢が付きやすくなるのです。
ポリッシングしない歯石とりなら、やらないほうがマシ!
と、動物の歯科研究会の先生も、はっきりと仰っていました。
(ポリッシング=歯をつるつるに磨くこと)
ちなみに、歯垢は 3日の放置で歯石になります。
歯石になったら、歯磨きでは取れません。。
今回の処置で、ルカさんの歯は、これだけ取れました。
その数、14本!
わんこの歯は多いとはいえ、
その 1/3が、歯周病で浮いていたことになります。
(黒いところがある歯が、「歯石と一緒に取れた」歯です
処置の前に「抜けていた歯」もありました)
これだけの歯が、ぐらぐらしていたのに、
ルカさんはごはんをばくばく食べて暮らしていたのでした。
… どう考えても痛いはずなのですが、ルカさんは鈍痛に強い子のようでした。
*若い頃に比べて、常に機嫌が悪くなった、という子の中には、
歯をはじめとする、体のあちこちに「慢性痛」を抱えている子がたくさんいます。
朝からお預かりさせていただいて、お昼休みの間に処置。
麻酔がさめても、多くの子たちは、まだちょっとぼーっとしているので、
当日の夕方にお迎えにきてもらいます。
翌日からは、だいたいの子たちが、いつもの食事、いつもの生活で大丈夫です。
ルカさん、寝て起きたら「痛い」「臭い」から解放されていて、
ずいぶんすっきりしたのではないかと思います。
おうちの子の口は、いかがですか?
口のなか、覗いていますか?
口が臭い、食べ方がなんかヘンになった、
固いものを食べない(かじらない)ようになった、
口のそばを触らせてくれなくなった…. などなど、
どれも、口のなかに問題があるかも、という兆候です。
また、問題なさそうだけど年齢が 8歳を越えてきた、という子も要注意です。
「おいしく食べる」ためには、口のなかの健康はとても大事。
人間も、どうぶつも、同じです。
健康診断の一環や、予防接種のときなどに、お気軽にご相談ください。