ノミ駆除してもなかなかいなくならない(ノミのおはなし。2
前回のノミの大増殖のお話、いかがだったでしょうか。
「知ってるよ〜」という内容だったでしょうか。
ノミが1匹や2匹ついた時点で、ご家族が気づくことは、ごくまれです。
お家のなかなど、「うちの子がよくいる場所」で、「うちの子についてるノミの子孫」であるノミがたくさんたくさん現れるようになってはじめて、「ノミがついたー!」と気がついて、大騒ぎになるわけです。
そのころには、もう、床に落ちた卵から成長した何十何百のノミが、毎日まいにち、さなぎから出てきているわけです。
ひえー。
ノミはなかなか死にません。
やったことある方はご存じだと思いますが、ノミがたくさんついている犬や猫をシャンプーしたところで、ノミが全部落ちるなんてことはあり得ません。
ノミがたくさんついている子を、お風呂に首まで浸けてみたら、水から逃げてきたノミで、顔がノミだらけになって、人相(?!)がわからないほどになります。顔中がノミで大混雑になるのです。
砂か土のように思っていた体の上の黒いつぶつぶは、ノミのフンですから、水にとけて赤くなって広がります。 (このくらいノミがついている子は、貧血を起こしていることも)
… わりとホラーです …
ちなみに、卵やさなぎは、殻で守られているので、バルサンなどのような薬を使っても、死にません。
ここで動物病院に駆け込んで、ノミ駆除薬を使って、わんこにゃんこの体の上からノミがいなくなっても、わんこにゃんこが住んでいるところには、ノミ予備軍(卵・幼虫・さなぎ)がたくさんたくさんいるわけです。
だいたい、卵から成虫までの全部のノミを 「100」とすると、
成虫が 「5」。
あとは、予備軍(卵・幼虫・サナギ)なのだそうです。
ノミの成虫がわんさかいるとしたら、予備軍は数え切れないほどに。。。
そして、人間が予備軍を見つけることは、とても稀。
予備軍は、環境(おうちのなか)にいることもあって、とっても見つけにくいのです。
わんこにゃんこについたノミは、そのうち死んでいくけど、
新たに、環境で育ったノミがどんどんわんこにゃんこにくっついていく。
そして死んで、新しいのがくっついて。。。
というのが、環境で育っているノミがいなくなるまで続きます。
(この「環境」が、散歩道だったら、そこのノミ予備軍を駆除できないので、それがずーっと続くわけです)
これは、保護された子猫のお腹です。フロントラインスプレー(生後2日目から使える)により、見えている全ノミが止まって(死んで)います。もっとたくさんたくさん寄生していました。
一点、気が付いていただけたでしょうか。
動物病院で使っているノミ駆除薬は、忌避剤(ノミよけ)ではありません。ついたノミを確実に駆除する(=やっつける)お薬です。新たなノミはまたつきます。ノミがおうちの子にたくさんついていたら、それは「うちの子が住んでいるところに、予備軍が山のようにいる」ことにほかなりません。
(*忌避剤は、完全にノミをよけられるわけではありません。蚊取線香で蚊に確実に刺されないようにしようとしたら、どんだけ煙たくならないといけないかを想像してみてください。いぬやねこが平気な濃度で、すべてのノミが逃げていくなどということがあるかどうか…)
駆除剤をつけているわんこにゃんこの上についたノミは、しばらくすると薬がついて死んでいきます。
「ノミ駆除薬をつけているのに、ノミがついてるー」
と言って再び病院に来る子の上についているノミは、こうして弱っているノミばかりです。
弱ってるから、みつかりやすいのです。
垂らすお薬の多くは、ノミに神経的な興奮を起こすので、観察していると、ノミがケイレンしたようになって、まともに動けず、弱っているのがわかります。そのまま飛んでも、元気なノミのようにあっという間に行方不明になったりしません。その辺で倒れて、ぴこぴこしています。
もし、そうでないとしたら。
駆除薬は、垂らすタイプで、おうちでつけてるのではないでしょうか。
こないだ垂らしたノミ駆除薬は、きちんと毛をかき分けて、正しく皮膚につけたかどうかを思い返してください。「垂らすタイプのノミ駆除薬」は、皮膚の上につけることが前提に作られています。毛の上に垂らしても、毛の上を広がっていくばかりで、体にきちんとつきません(つまり、垂らした意味がほとんどない、ということです)。
使っても効果がないともったいないだけなので、使い方をよく読んで、正しく使いましょう。
ノミ駆除薬の多くは、1ヶ月に1回投与です。そこも忘れないでください。
(3ヶ月に1回のものも出てきました。動物病院にご相談ください)
(「垂らすノミダニ駆除剤」には、体の表面に広がっていくタイプや、体のなかに吸収するタイプがあります。皮膚の状態によっても効果が変わる可能性がありますので、「これはどうも……」となったら、やっぱり動物病院にご相談くださいね)
弱っていた子猫(治療・シャンプー後)。当院では、オトナの猫でも、ノミ寄生で貧血を起こしていた子が複数来院しました(おうちの子です。ノラさんではないのです)
そもそも、ノミが簡単に人間に捕まること自体、「ものすごい数が寄生している」か、「弱っているか」のどちらかなのです。
やつらはめちゃめちゃ動きが早いです。侮ってはいけません。
ダテに平たい体ではありません。毛と毛の間をぬって、すっと消えていってしまいます。
ノミ取りクシで完全に取りきれること自体あり得ません。
そうこうしているうちに卵が落ちていって、部屋やわんこにゃんこの寝床で大繁殖を始めるのがオチになります。
ノミを潰しても、ノミの卵をその辺に撒き散らす結果になるので、オススメしていません。ガムテープか何かにくっつけてしまうといいかと思います。
と、熱弁をふるわねばならないほど、ノミが大量発生しているという状態が、いま、あちこちでたくさん起きています。
ノミが増え始めたら(しかも家のなかで)、人間もたいへんな目に遭います。
いぬやねこにつくノミが人間に寄生し続けることはありませんが、刺されないわけではありません。ノミに刺されると、蚊に刺されるのよりもずーっと悲惨なことになります。
増殖する前に駆除剤を使い始めることをオススメします。。