口のなか、覗いていますか? (2)
ルカさん(ダックス 8才 男の子)の、歯石処置をしたときのお話のつづきです。
「口が臭いと言われた」とのことで、実は、飼い主さん自身はあんまり気がついていません。本人(犬)も、ごはんをおいしく食べています。
しかし、事前に口を覗かせてくれて、意外と口の中がたいへんなことになっていることがわかったので、「麻酔をかけての処置をしましょう」と判断ができました。
麻酔の前のチェックで、麻酔をしても大丈夫でしょう、という判断もできました。
*麻酔をかけての歯の処置の場合、多くが、「午前中に来院して、お昼休みの間に麻酔をかけて処置をして、麻酔が覚めてしゃっきりしてきたころ=夕方に帰る」というパターンになります。
(その子の状態によりますので、必ず、ではありません)
あんまり触ると、さすがに痛いのか嫌がりはじめるので、事前のチェックで口をものすごくしっかりみられたわけではないのです。
事前チェック(麻酔も鎮静もなし)での歯のレントゲンは(ルカさんが)同意してくれそうになかったのと、なにより、「麻酔をかけて、チェックをしながら、獣医師(=私)が最善と思われる方法(治療や検査)をさせてもらいます」ということに飼い主さんが同意してくれたので、おまかせしていただくことになりました。
*飼い主さんは、私の高校時代の同級生です(東京在住)。年始の同窓会で会って、当時私が都内でで獣医師をしているよーと伝えたところ、ルカさんを連れて診せにきてくれたのでした。
前置きはさておき、
麻酔をかけて、しっかり眠ってもらいます。
*麻酔中は、心拍や血圧、血液中の酸素濃度、呼吸などをモニターしています。
また、抜歯の可能性がある処置の場合は、鎮痛剤もしっかり使用します。
状態が安定していることを確認して、改めて、口の中のチェック。
それが、この写真です。
歯が、わかるでしょうか。
(こういう写真が苦手な方もいるので、小さめで載せています)
ちょっと、印を入れてみます。
黄色で囲んだところが、右の上側の歯になります。
ほとんどが歯石です。白く見えるのが歯の先っちょ。
他のわんこさんですが、きれいにしたあとに撮った写真がこちらです。
右上の犬歯(右上の大きい歯)の後ろ(左側)に、小さい歯が 3つ。その後ろにちょっと大きい歯があって… というのが見えています。
もういちど、ルカさんの歯を見てみると、
…それぞれの歯が歯石で合体していて、なにがなんだかわかんない状態だぞう、というのが、おわかりいただけるかと思います。。
同じ側の下の歯(左の下にちょこっと見えているところ)は、下唇で隠れちゃっているのですが、見えている部分は、白っぽくて、歯石に覆われているところは少ないように見えます。
黄色の右下に見えているのは、前歯の左側(向こう側)。歯の内側が見えています。歯の先は白く見えていますが、根っこは全部歯石に覆われています。
(まだまだ続きます)
余談:口の中のチューブ
ルカさんの口の中にも、きれいな歯のわんこの口の中にも、チューブのようなものが入っています。
これは、「気管チューブ」というものです。これがあることで、ガス麻酔の量や呼吸のモニターやコントロールができるのです。(オレンジ色のは、チューブを止めているヒモです)
犬猫も、歯石処置の場合は、人と同じように超音波スケーラーというものを使います。これは使うと発熱するため、水を噴射しながら使用するのです(仕組みは、人の歯石とりの機械と一緒です)。
息をするときに、この水を吸い込んでしまうと、最悪の場合、誤嚥性肺炎というのになってしまいます。水が気管に入り込むのを防ぐためにも、気管チューブは必須! なのです。
なにしろ、歯石や歯垢は細菌の塊。油断ならない相手です。。